ジェームス・ボンドの新作“Skyfall(スカイフォール)”のプレミアーが迫ってきましたが、今回の新作において、プロダクト・プレイスメント(映画・テレビドラマ等において、役者に特定の商品を絡ませる宣伝方法)が多数行われているのは明らかです。特にハイネケンの使用はファンを怒らせたようです。“Skyfall”の中で、クレイグ・ボンドはいつものマルティーニ(ステアではなくシェイクで)ではなく、ハイネケンを飲んでしまうんです。

しかし、Hollywood Dailiesのスティーブ・パッターソンによると、我らのボンドがマルティーニ以外のお酒を口にしたのは今回が初めてではないそうです。過去の作品の中で秘密探偵を演じた役者達はなんと、バーボン・ブランデー・ワイン・・・そしてモヒートまでもうれしそうに口にしていたんです。


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ハイネケンはこの探偵にビールを飲ませるために2800万ポンドも費やしたと言われています。これは映画全体の制作費である9370万ポンドの約3分の1にも昇るとも言われています。他に映画内で使用されている商品は、トムフォードのテーラードスーツ、ソニーのバイオ、アストン・マーチンDB5(再び)、そして、あの悪名高いボンドの銃・・・ワルサーPPK/Sなどが含まれます。これだけ多くのプロダクト・プレイスメントが行われているとなると、映画も終わった・・・と感じる人も多いのではないでしょうか。

しかし、実際のところこういったプロダクト・プレイスメントは、製作費の面で非常に重要な役割を担っているのです。
映画内で多数のプロダクト・プレイスメントが行われていることに関して「残念だ」と述べていたクレイグは、「この映画を作るのにかかった費用は膨大で、それを宣伝するのにも同じくらいの費用が伴う。そうなると、やれることをやるしかないんだよ。」と言っています。しかし、映画の歴史を振り返るとわかるように、ボンドがブランド品を宣伝した最初の人物ではありません。
オリバー・ノーブルさんの動画、“A Brief History of Conspicuous Product Placement in Movies”によると、プロダクト・プレイスメントが映画で最初に起用され始めたのは1919年にも遡り、代表例としてはロスコー・“デブ”・アーバックル主演のサイレント映画“The Garage(ガレージ)”が挙げられるそうです。この映画内のあるシーンでは、Red Crown Gasolineのロゴが壁に貼られています。
また、初のアカデミー賞最優秀作品賞を受賞した1927年の“Wings(つばさ)”の中でもハーシーズのチョコレートバーが使われています。

1932年にリリースされたマルクス兄弟の映画“Horse Feathers(御冗談でショ)”では、セルマ・トッド演じるキャラクターが湖に落ちてライフセーバーを要求すると、男性がライフセーバーズキャンディを女性に向かい投げる等、プロダクト・プレイスメントはストーリーの中に組み込まれるようになりました。その後、こういった広告活動は映画製作の一部となり、スティーブン・スピルバーグの映画“E.T. the Extraterrestrial (E.T)”でもE.Tがハーシーズのリースズを食べまくる等、数多くの有名映画でも行われるようになりました。
また、異なる市場に応じて異なるブランドが起用されるようにもなりました。その代表例が、1993年のシルベスター・スタローン主演の映画“Demolition Man (デモリションマン)”です。アメリカ版の中で、スタローンとサンドラ・ブロックはタコベルで行われるディナーパーティーへ向かい、タコベルのことを“フランチャイズ戦争の唯一の生存者”と表現します。しかしヨーロッパ版では、ディナーパーティーが行われる場所はピザハットに変えられています。

ビデオリンク: http://www.mirriad.com/2012/01/product-placement-in-movies-a-brief-history/

このように、プロダクト・プレイスメントはストーリーに組み込むことも出来るし、制作費のことを考慮すると大きなメリットがあります。
しかし、映画そのものに悪影響を与える可能性があるのも事実です。2005年のマイケル・ ベイ監督の映画“The Island(アイランド)”ではキャデラック、Xbox、プーマ、MSN、ノキアを含む、35もの異なる商品が登場します。また、2009年の”Transformers: Rise of the Fallen(トランスフォーマー/リベンジ)”で、同監督は前回の記録を破り、計47のブランドを使います。そして、一般市民に向けて大量のマウンテンデューを撃ってしまう極悪キャラの“ディスペンサー”と呼ばれるマウンテンデュー自販機のロボットなんていうものまで作ってしまうから驚きです。
他の悪い例としては、2007年の”Fantastic Four: Rise of the Silver Surfer(ファンタスティックフォー:銀河の危機)”等に見られる、ストーリーを進める上での不必要なプロダクト・プレイスメントの利用です。あるグループが米軍から逃げなければならない映画のワンシーンの中で、クリス・エヴァンス演じるジョニー・ブレイズは、何の理由も無く彼らのシンボルでもあるフォードロゴの車をヘミエンジンと呼びます。このように、プロダクト・プレイスメントは映画製作において必要ではありますが、程度をわきまえて行われないといけないのでしょう。

今のところ私が収集した情報を見る限り、ボンドシリーズの新作“Skyfall”は良さそうです。